香港・マカオ News

2017.01.01 / 

2016年 香港10大ニュース

2016年は年初の旺角暴動に始まり、立法会議員の補欠選挙、銅鑼湾書店事件、「香港独立」志向の拡大、立法会議員選挙とその宣誓問題をめぐる香港基本法の解釈、17年の行政長官選挙に向けた選挙委員会選挙や候補者の登場、梁振英・行政長官の出馬断念など、政治的に大いに揺れた年だった。昨年の主なニュースを振り返る。

立法会議員選挙
親政府派40議席、その他30議席

 第6期立法会議員選挙の投票が9月4日に行われ、5日に開票された。計70議席のうち親政府派が40議席、民主派その他が30議席を獲得し、民主派その他は3分の1以上の議席を確保した。2014年の「セントラル占拠行動」によって台頭した「香港独立」や「民主自決」を唱える本土派(排他主義勢力)などの候補者からは7人が当選。主流民主派との協力は見込めず、過激派勢力が拡大することから次期立法会では議会運営がさらに困難になることが予想される。

 地区別直接選挙枠(35議席)では約220万人が投票、投票率は約58%に達し、ともに過去最高を記録。獲得議席は親政府派16議席、その他が19議席。その他勢力のうち初参戦となった本土派や占拠行動参加者では、青年新政が2議席、熱血公民が1議席、香港衆志が1議席、無所属が2議席。主流民主派はベテラン議員が落選した。

 今回の選挙では「香港独立」を主張・推進する者の一部が立候補資格を認められなかったことなどが反発を招き、親政府派には不利と予想されていた。結果は3議席が親政府派から民主派その他に移ったものの、引き続き親政府派が多数を占めた。選挙管理委員会は7月、立候補届け出に香港基本法を擁護する確認書を含めることなどを発表。6人の候補者が「香港独立」の主張・推進を続けているため届け出が無効となった。

立法会議員の宣誓問題
全人代が基本法解釈

 全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は11月7日、青年新政の梁頌恒氏と游蕙禎氏の就任宣誓をめぐる問題で香港基本法104条の解釈草案を採択した。全人代常務委による基本法解釈は返還後5回目。宣誓は法定の形式と内容で行うことや、宣誓を拒否すれば相応の公職の資格を喪失することが確認された。

 10月12日に開会した立法会の就任宣誓で、青年新政の2人は「Hong Kong is not China」と書かれた旗を掲げ、宣誓に中国の蔑称である「支那」や英語のスラングを盛り込んだ。基本法104条では「香港基本法を擁護し、中華人民共和国香港特別行政区に忠義を尽くす」と宣誓することが義務づけられているが、2人の宣誓はこれに沿っていないため無効とみなされた。

 特に「支那」は大きな反発を招き、立法会議事堂前で度々行われた抗議活動には元軍人も参加し、新聞には連日のように抗議広告が掲載された。「セントラル占拠行動」に反対するため設立された「保普選反占中」は13日、フェースブックで青年新政の2人に公開謝罪と発言撤回を要求、立法会には解任を求める署名活動を始め、10月末までに100万人余りが署名した。

 特区政府律政司が10月18日、2人の議員資格喪失を求め高等法院(高等裁判所)に提訴。高等法院は11月15日に政府勝訴の判決を下した。立法会秘書処は12月5日、判決を受け、2人が擁していた議席が空席となったことを官報に掲載した。
 さらに律政司は12月2日、高等法院に劉小麗氏、姚松炎氏、羅冠聡氏(香港衆志)、梁国雄氏(社会民主連線)の4人の議員資格喪失を求め提訴した。

「香港独立」活動が拡大
大学から中高校へ波及

 国慶節(建国記念日)に当たる10月1日朝、大学・専門学校十数校で「香港独立」と書かれた大型の垂れ幕が掲げられた。これらはすべて独立派「香港民族党」が提供。香港民族党は3月に創設され、「香港共和国」の建国や香港基本法の廃止を掲げたことから、国務院香港マカオ弁公室からは即座に批判が上がった。香港大学学生会の会報『学苑』でも再三にわたり香港の「独立・建国」を主張する論文が掲載されるなど物議を醸している。

 香港民族党は8月、「中学政治啓蒙計画」と称するプロジェクトを発表、中高生メンバーの募集を始めたほか、中学・高校で香港独立を鼓吹・推進する「学生動源」も現れた。学生動源は2月の立法会補欠選挙で本土民主前線の運動員を務めていた高校生らが4月に設立。多くの中学・高校に下部組織を設置している。

 独立志向の背景には「1国2制度と基本法は2047年に期限を迎える」という誤解があるが、袁国強・司法長官は「基本法のうち第5条(現行の資本主義制度と生活スタイルを維持)だけが『50年不変』を提示しており、他の条文にこの期限はない」と指摘した。

春節の旺角で暴動
「本土民主前線」が呼び掛け

 春節(旧正月)初日から二日に当たる2月8~9日、旺角で暴動が発生し、10日までに14~70歳の男女64人が逮捕された。ピーク時には700人余りが旺角の14本の通りに集まり、面積110平方メートルに相当する2000個のレンガを路上からはがして警官に投げつけ、16日までに68人が逮捕、うち41人が暴動罪、違法集会罪で起訴された。公立病院に運ばれた負傷者 は130人余りで、うち警官が90人余り、メディア関係者が5人。警官1人はほお骨の再建手術を受ける重傷となった。

 特区政府警務処の廬偉聡・処長は、今回の事件がレンガで警官を襲撃し、放火を行うなど従来のデモ活動と違い、現場では暴徒が使用した物品を運ぶ車両が目撃されたことから、組織的で計画的な事件である可能性を示唆。特に旺角花園餐庁付近の放火現場では誰かが灯油などの可燃剤をまいたため火の勢いが強く、火柱は10メートル、黒煙が20メートルに達した。

 逮捕者のうち約20人は本土派団体「本土民主前線」のメンバーやボランティアで、2月28日に行われた立法会新界東選挙区の補欠選挙に立候補した梁天琦氏とスポークスマンである黄台仰氏が含まれていた。梁氏が選挙事務処に申告した選挙費用にはガソリンや暴動当日に購入した大量の食品・飲料が計上されていた。

「銅鑼湾書店」関係者失跡 
中国本土で書籍を違法販売

 中国政治書籍の専門書店「銅鑼湾書店」の関係者5人が2015年秋から年末にかけて相次ぎ失跡。最後に失跡した株主の李波氏が妻と従業員に無事を知らせるファクスを送ったものの、公安職員による越境逮捕とうわさされた。

 中国中央電視台(CCTV)は16年1月17日、店主の桂民海(桂敏海)氏自身が説明する姿を放映。桂氏は2003年に浙江省寧波市で飲酒運転による事故で女子大生を死亡させ、懲役2年、執行猶予2年の判決を受けた。だが他人の身分証を使って出国し、海外逃亡を続けていた。自責の念や父親の死去、母親が生きているうちに会いたいことなどから15年10月に公安機関に出頭した。

 さらに桂氏が国家新聞出版部門の販売許可を得ていないことが明らかな書籍を郵便によって本土で大量に販売し、違法に利益を得ていたことも報じられた。拘束された他の関係者3人は桂氏の指示により販売活動を担当。4人がいずれも中国本土で逮捕されたのに対し、李氏だけが香港から姿を消したことが注目されていたが、李氏は密入境により本土に赴いて捜査協力したことを明らかにした。

全人代の張徳江・委員長が来港
民主派との対話に前向き

 全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の張徳江・委員長が5月に来港し、特区政府主催の「一帯一路」サミットで基調講演を行った。張委員長は歓迎晩餐会の前に行われた小規模な宴会で民主派を含む立法会議員らと会談。出席した民主派議員4人の発言時間が3分の1を占めるなど、民主派との対話に積極的な姿勢を示した。

 物議を醸している2047年以降の香港の前途について張委員長は「1国2制度は中国本土と香港の間の最大公約数であり、変えるべきでない」「中央は香港を本土化しようとしているとか、1国1制度に変わるとかの言い方は全く根拠がない」と断言し、香港社会の不安払しょくを図った。

 張委員長はまた「『自決』や『香港独立』は成功せず、香港の根本的利益に合致せず、絶対的多数の市民は賛成しないだろう」と述べたほか、民主派と意思疎通を図る意向を示した。

 中央政府は11月末、「一部立法会議員とその他の者に対し実施している中国本土への入境規制を緩和する」と通達。民主派の「回郷証」申請をあらためて受け付け始めた。

深港通が正式にスタート
滑り出しは低調

 香港と深圳の両証取の相互乗り入れ「深港通」が12月5日に正式に開始された。初日に「深港通」を通じて香港から深圳株市場に流入した資金は26億7000万元で、1日当たりの投資上限の21%。一方、深圳から香港株市場に流入した資金は9億200万ドルで、投資上限の8.1%。いずれも当初の予想を下回っただけでなく、「滬港通」の開始初日の実績(上海株120億8000万元、香港株22億4000万ドル)にははるかに及ばなかった。

 国務院は8月、「深港通実施方案」を承認。「深港通」のシステムは主に上海・香港両証取の相互乗り入れ「滬港通」に準じるが、最大の変更は投資上限を設けないことで、同時に「滬港通」も上限が撤廃される。ただし1日の取引上限は香港から深圳が130億元、深圳から香港が105億元で、「滬港通」と同様の制限を維持する。「滬港通」「深港通」を合わせると1日当たり最大210億元が中国本土から香港に流入することとなっている。

ATVが閉局
ViuTVがスタート

地上波テレビライセンス更新に失敗した亜洲電視(ATV)が4月1日をもって閉局したのに伴い、電訊盈科(PCCW)傘下の無料テレビ「V」が4月6日から放送を開始した。「V」はViewとVideoを、「I」と「U」は「私とあなた」を意味する。24時間放送で、うち21時間は自社制作の番組。開局を飾った自社制作の『跟住矛盾去旅行』は、立法会の曽鈺成・議長と「長毛」こと社会民主連線(社民連)の梁国雄・議員が一緒に旅するという斬新な企画で話題になった。

 ViuTV開局で無線電視(TVB)の視聴率に影響が出たとの報道もある。TVBの4月4~8日19~23時の平均視聴率は21・7ポイントで、前週に比べ0.2%下降。そのうちViuTV開局初日のTVBの平均視聴率は19.4ポイントで、前週に比べ2.9%下降した。

59年ぶりの寒さ
大帽山で遭難相次ぐ

 1月24日は天文台で気温3.1度を記録し、59年来で最も気温の低い日に。観測史上では6番目に低い気温だ。大帽山では零下6度に達し観測史上最も低い気温を記録した。山間部、新界北部などで霜や氷、凍雨が見られたほか、天文台本部でもみぞれが観測されたが、雪の報告はなかった。教育局は小学校と幼稚園で1月25日を休校とした。寒波を理由に休校するのは初めて。ここまで寒くなることは珍しいため多くの市民が霜や氷を見ようと山へ登り渋滞を招いたほか、クロスカントリーレース参加者が低体温症になるなど、遭難者が相次いだ。路面凍結で救急車が現場へ行けず、救急隊員が徒歩で進むなど救助は困難を極めた。大帽山で救助された人は111人を数え、飛鵝山では一時は130人が山中に取り残される事態に陥った。

行政長官の娘
荷物を特別扱いで物議

 梁振英・行政長官の次女の荷物が香港国際空港のセキュリティーチェックの正規手順を経ずに運ばれたことが特別扱いだと物議を醸した。今年3月下旬、次女が出発ロビーに荷物を置き忘れた際、長官が娘の携帯電話を通じて保安員と話をしたほか、見送りに来ていた長官の妻が出境手続きを済ませていた次女本人の代わりに荷物を確認し、職権乱用との批判が出た。
 これに対し梁長官は4月7日「父親だと名乗っただけで行政長官だと明かしておらず、空港職員に便宜を図るよう圧力をかけたことはない」と声明を発表。同様のケースは過去にもあり保安規定の違反ではないとの見解を示した民航処や保安局に対しては、香港空勤人員総工会が4月17日に抗議集会を開催。しかし梁長官や当局の説明を支持する声もあり、同日は集会に反対する数十人と集会参加者との衝突も起きた。

(2017年1月1日『香港ポスト』)

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