香港・マカオ News

2016.04.16 / 

2047年問題 独立論議が再燃

 香港独立を主張する「香港民族党」が3月28日に創設された。「香港共和国」の建国や香港基本法の廃止を掲げたことから、国務院香港マカオ弁公室からは即座に批判が上がった。香港大学学生会の会報『学苑』でも再び香港の「独立建国」を主張する論文が掲載されるなど、若者らを中心とする独立志向が再び物議を醸している。

「香港民族党」が設立

 香港民族党は行動綱領として「香港共和国」の建国や香港基本法を廃止し独自の憲法をつくることを表明。召集人の陳浩天氏は昨年、香港理工大学学生会を香港専上学生連会(学連)から脱退させた「退連関注組」の召集人を務めていた。卒業後はエンジニアリング会社に勤務していたが、退職し同党の創設に専念している。9月の立法会議員選挙への候補擁立を積極的に検討しているが、民主派には関心がないため狙い撃ちはしないという。議会抗争、街頭抗争、ストライキ、授業ボイコットなど、あらゆる抗争手段に参加する構えだ。党員は現在30~50人で、主に大学・専門学校生。会社登記処に登記申請したが政治的理由で拒否された。記者会見には「青年新政」の梁頌恒・召集人や「セントラル占拠行動」参加者で区議会議員の陳国強氏も出席し、支持を示した。

 香港民族党が創設されたことを受け、国務院香港マカオ弁公室が30日に新華社を通じてコメントを発表。同弁公室スポークスマンは「われわれは香港独立のいかなる言行にも断固反対する。香港の極めて少数の者が香港独立の組織を設立したことは国家の主権、安全、香港の繁栄と安定、香港の根本的利益を脅かす行為」と名指しを避けながらも、「香港市民を含む全中国国民が反対し、国家憲法、香港基本法、現行の関連法律にも違反する」と批判。さらに「特区政府が法に基づき同組織の登記を拒否したことは妥当」と評価した。

 中央人民政府駐香港特区連絡弁公室(中連弁)の張暁明・主任は31日、イベントに出席した際にインタビューを受け、「香港で公然と独立を趣旨とする政党が設立されたことに対し、はっきり言わないわけにはいかない。これは言論の自由の範囲をはるかに超え、1国2制度の最低条件に抵触している」と強調。「実現しないからといっても容認するわけにはいかない」と述べ、特区政府が法に基づき処理すると指摘した。特区政府律政司のコメントによると、基本法第1条に「香港は中国の不可分の一部」、第12条に「香港は中国の高度な自治権を有する地方行政単位で中央政府が直轄する」とあるため、独立行動は基本法違反で刑事罪に問われる可能性があるという。

 時事評論家の劉鋭紹氏は「香港独立は中央の敏感なツボに当たる。同弁公室の反応は中央の緊張の度合いを表しており、独立志向が青年の間で高まっていると懸念している」と分析。民主党の何俊仁・議員は「民主派の立場は民族党とは違う。今回のコメントだけでは民主派と中央の関係に影響するとは思わない」と一線を画した。

 これより先に香港大学学生会の会報『学苑』最新号で再び香港の「独立建国」を主張する論文が掲載され、昨年1月に続き物議を醸していた。3月14日に公表された『学苑』は2015年度最終号として「香港青年時代宣言」と題し、以前にも増して独立志向を鮮明にした。巻末の論文「われわれの2047」では「50年不変」が満期を迎える47年の「第2次前途問題」に当たり、香港を国連が承認する「独立主権国家」とする要求を掲げている。かつて『学苑』に携わっていた匯点(民主党の前身)メンバーが唱えた「民主返還論」も否定し、「民主派は反体制派の資源と発言権を掌握し、われわれの前途を妨げている」と批判した。

李嘉誠氏も若者らを批判

 梁振英・行政長官は15日の記者会見でこれに触れ、「2047年以降も香港の今の資本主義制度と生活方式を変える必要はない。香港が中国の一部である事実は47年以降も変わることはない」とコメント。また4月5日の会見でも香港と中国本土の問題で特区政府は「香港人優先」の政策を講じているため「独立によって香港人の利益を守る必要はない」と強調した。

 一方、国務院香港マカオ弁公室の馮巍・副主任は『サウスチャイナ・モーニングポスト』のインタビューを受け、分離主義と香港独立について「いずれも香港社会の主流ではない。香港の絶対的多数は愛国で、現実的で知恵がある」と強調。「若者が分離主義の影響を受けるのは香港に限らず世界的な潮流かもしれない」との見方を示した。

 財界の大物も批判の声を上げた。長和実業の李嘉誠・会長は3月17日に行われた業績発表の記者会見で「香港人は『独立』という2文字を言うことを嫌う。根本的に現実からかけ離れている。香港は独立する資格もないし、独立できない。長年の経験からみて香港人は独立を認めない」と批判し、「もし香港が中国の支援を失い、自生自滅しなければならなくなればハンセン指数は少なくとも半分に下落する」と述べた。旺角暴動についても「香港にこれ以上損害をもたらしてはいけない」と戒めた。

 先の立法会補欠選挙で注目を浴びた本土民主前線もデモで「香港独立」「香港建国」などのスローガンを掲げている。選挙で落選した梁天琦氏は3月1日に記者会見を行い、9月の立法会選挙に意欲を示したほか、親政府派と民主派は敵だが、理念が同じ他の本土派(排他主義勢力)組織とは選挙協力の可能性があると示唆した。だが本土派は内部分裂が深刻化しており、梁氏が湖北省出身であることが明らかになると、他の本土派組織は即座に梁氏を「偽本土派」と攻撃。本土民主前線が中国本土からの旅行者や移住者を排斥していることとの矛盾や、選挙活動中は出身を隠していたことが批判された。

 そうした中、梁氏と本土民主前線スポークスマンの黄台仰氏が3月9日に在香港米国総領事館の職員と密会していたことが暴露されたほか、黄氏は4月にインドに赴きダライ・ラマ14世に接触する可能性が出てきた。黄氏は暴動罪で起訴され、香港を離れないことが保釈条件となっていた。だが裁判所が保釈条件変更の申請を許可し、4月26日~5月5日にチベット亡命政府のあるインドのダラムサラに赴き「民族青年リーダー会議」で講演する。同会議は米国の全米民主主義基金(NED)が支援する人権団体が主催し、ダライ・ラマも出席する。昨年4月に米国で開催された同会議では学連の周永康・秘書長(当時)らが講演していた。

 暴動発生後も中央は対香港政策の引き締めを示さなかったが、独立勢力と外国勢力の結託となれば警戒を強めないわけにはいかないだろう。(2016年4月15日『香港ポスト』

ADVERTISING