基本情報

9+2とは

香港・マカオ・広東省を結ぶ橋りょう「港珠澳大橋」着工について協議を行う李克強副首相(当時)とドナルド・ツァン前香港行政長官

広東省が旗振り役

9+2とは広東省、福建省、江西省、貴州省、広西チワン族自治区、四川省、雲南省、湖南省、海南省の8省・自治区に香港、マカオの2つの特別行政区を加えた「汎珠江デルタ経済圏」。総面積は中国全体の約21%、人口は同40%近くを占める。

汎珠江デルタ経済圏 9+2エリア

汎珠江デルタ経済圏 9+2エリア

広東省社会科学院が構想の策定を行い、2004年6月に9+2の首長級会議が香港、マカオで開催。広東省広州市でインフラ、エネルギー、観光、貿易など10分野にわたる協定の調印が行われた。

当初の目的は中国西南部の国際市場ルートの確立だったが、後に香港、マカオが加わった。雲南省、広西チワン族自治区などがASEAN(東南アジア諸国連合)に隣接していることから、中国と東南アジアを結ぶ高速道路「南北回廊」の建設でさらなるASEAN市場開拓をにらむ中央政府からも強い支持を得ている。

長江デルタの台頭で

9+2構想の背景には、上海市を中心とする長江デルタの台頭が広東省政府に危機感を抱かせたことがある。2003年当時、すでに長江デルタの江蘇省でさえもGDP(域内総生産)は1兆元を超え、広東省の水準に近づいた。また、長江デルタの2004年第1・四半期の貿易総額は初めて珠江デルタを上回った。広東省と香港、マカオの経済一体化を図る「大珠江デルタ経済圏」では香港が中心的な役割を担っていたが、9+2構想は広東省が旗振り役となっていることもその表れ。

長江デルタが上海と浙江・江蘇省の14都市(杭州、寧波、湖州、嘉興、紹興、舟山、南京、鎮江、揚州、泰州、常州、無錫、蘇州、南通)から成るのに対し、珠江デルタは広東省の9都市(広州、深圳、珠海、仏山、恵州、肇慶、東莞、中山、江門)に過ぎず、相対的に珠江デルタが発展する余地は長江デルタより小さい。

また、広東省は高度経済成長によって投資コストが上がり、競争力を維持するために湖南省や広西チワン族自治区などの低コスト地域を後背地とする必要が生じたことも9+2構想を後押しした。

今後の課題

目下の課題は9省・自治区と2特別行政区というエリアの広さからくる調整の難しさ。かつて広東省に依存していた海南省は観光業の発展と不動産投資に湧き、空前のバブルを経て現在は独自路線を歩んでいる。湖南省や江西省は上海市との関係がやや密接であるし、福建省は台湾との中継点としての役割に重点が置かれている。

香港、マカオという特別行政区は政策の違いなどもあり一筋縄ではいかない。また、香港にとっては華南経済圏での存在感が薄れることも懸念材料となっている。

ADVERTISING